いちばん大事なのは「会社」をみつけること
大学生(多くの場合大学3年生)が就職活動で本格的に動き出すにあたって、大上段につぎのことを考えてみましょう。就職活動でいちばん大事なことは何か?
この質問に「自己分析」と答える人もいます。でも、たぶんちがいます。では、何が大事なのか?
就職活動でいちばん大事なのは「会社」をみつけることです。
では、どんな会社をみつければいいのでしょう? 「いい会社」をみつける? 「自分に合う会社」をみつける?
これだと、ことがらの半分しかとらえてないと思います。もう少し踏み込んで明確にしたほうがいいでしょう。
就職活動で一番大事なのは、「自分が入社してもいい」と思える会社で「自分を採用してくれる会社」をみつけることです。
そして、その中でできるかぎり納得の度合いの大きい会社をみつける。それは「就活とは何か」ということでもある。
このあたりまえを見失うことも
これは言ってしまえば、あたりまえの話です。でも、このあたりまえを見失ってしまうこともあるのです。
たとえば「あこがれの人気企業」ばかり受けている学生さんは、そうなのかもしれません。「自分が入社したい」ということだけで、「自分を採用してくれるか」という観点が弱いのです。
もちろん、就職活動の時期だからこそ、そのようなあこがれの会社を受けることができるのですから、トライしたらいいと思います。でも、そういう活動だけではどうなのか……
受験生のような発想で受ける会社を考える
就活生におすすめしたいのは「受験生のような発想で、自分が受ける会社を考えてみる」ということです。
高校や大学の受験では、自分にとって「難しい」と思える大学(高望み)、「なんとかいけそう」という大学(実力相応)、「かなり確実に受かりそう」な学校(滑り止め)をみきわめ、それぞれ1つは受けたりしたものです。
「偏差値」は、その見きわめのための道具でした。最近は通常のペーパー試験以外の選抜も増えましたが、受験では典型的には以上のような判断をしていたわけです。
こういう発想で、受ける会社を「松」「竹」「梅」的にピックアップしていくのです。せめて、「松」のほかに「竹」くらいは考えておく。
そして、ピックアップした会社について、基本的なことを研究していく。つまり、書かれた情報を読んだり、人から話を聞いたり、足を運んで様子をみたりする。
もちろん本格的な就活シーズンになれば、ただ机に向かって「企業研究」しているのではなく、じっさいにいろんな会社にエントリーしながら、同時並行的に慌ただしく「研究」していくことになるでしょう。
「自分にとってどうなのか」の判断
ただし、会社というのは、試験勉強の偏差値的な尺度で測ることはできません。とくに「滑り止め」なんて、会社の場合はみつけるのがむずかしい。
でも「自分にとってこの会社はどうなのか」ということを、自分なりに判断していくしかありません。
自分が「入社したい」あるいは「入社してもいい」と思える会社なのか。自分を採用してくれる可能性があるのか。むずかしくても、その両面から情報収集をして考えることです。
以上の姿勢で行動していくと、その人の「会社をみつける」能力はだいぶ高くなっているはずです。それによって、就職活動の問題の半分くらいは解決します。
つまり、受けるべき会社をある程度は見きわめられるようになってくる。
もちろん「ある程度」であって、アテが外れることのほうが多いです。でも、やみくもに会社を受けるレベルよりも、はるかに納得のいく結果に近づくことができるはずです。
「相場」を率直に言えるのは
そして親御さんは、このような「自分の位置づけ」「相場の見きわめ」について子どもさんにはっきりしたことが言えるほとんど唯一の大人です。
就活でアドバイスをするカウンセラーや先生のような他人は、そうはいきません。
カウンセラーが「この会社はあなたには高望みではないか」と言うことは、プライドを傷つける心配などから、ふつうはむずかしいです(ただし婉曲に一般論として言うことはあります。「この会社は競争倍率がこのくらいで、誰にとってもも難関である」とか)。
進学・受験の場合は偏差値という数的なモノサシがあるので、「それは高望み」ということは比較的言いやすく、本人も自覚しやすいです。また、子どもの頃から勉強の成績を集団のなかで比較されながら育ってきたので、誰もが「自分の位置づけ」はかなりわかっています。
しかし、企業への就職はそうはいかない。学生さんたちは「自分の位置」がみえにくく、あこがればかりになってしまうこともある。
そういうとき「冷静に相場を見きわめなさい」と率直に言える人がいるとしたら、第一は親御さんです。限界はあるとしても、一番可能性のある人なのです。