一番大事なアドバイス
就職活動ではいろんな文章を書くことになります。そのような「就活の作文」は、本ブログの重要なテーマのひとつです。
また私そういちは、世界史や勉強法などについての著作もある、プロの書き手のはしくれです。文章についてそれなりの考えもあります。
学生さんから「どうしたら文章が上手くなりますか?」と、質問されることがあります。親御さんや先生から「子どもや生徒にどうアドバイスしたらいいか」と聞かれたこともある。
「文章を書くときに行なうべき大事なこと」をひとつあげるとしたら、「書いたものを何度も何度も読み返す」ことです。これが一番大事。
「どういう練習をしたらいいか」は、以下の記事に書きました。この記事では「書くときに行なうべきこと」について述べます。
立花隆さんの本で「なるほど」
「文章の書き方」については、いろんな本が出ています。そういう本を私も読みました。
その中で一番役に立ったアドバイスは、「細かな方法論はいいから、書きながら何度も読み返して、推敲することだ」というものです。評論家の立花隆さんが、『知のソフトウェア』(講談社現代新書、1984年)という本で、そういうことを述べています。
それを読んだのは、大学生のころでした。「なるほど」と印象に残ったのですが、実行することになったのは、何年もあとのことです。
5~6回は読み返す、できればもっと
自分のことを振り返って思うのですが、文章がうまく書けていない人は、ほとんど推敲をしていません。自分の書いた文章を、ほんの1~2回しか読み返していないのです。
しかし、自分の本を何冊も出しているような書き慣れた人の話を聞くと、少ない人でも5~6回は読み返して推敲すると言います。
書くことに慣れてないうちは、もっともっと読み返すことが必要です。読み返すたびに直すところをみつけて、少しでもわかりやすく、読みやすくなるように書き直しましょう。
ワープロは、書き直すのに便利な道具です。就活の作文は手書きで提出することもありますが、下書きはワープロを使いましょう。
私はワープロで文章を書いていて、推敲が数十回を超えることもあります。自分の著書を商業出版したときは、そうでした。それでも直すところはまだある、という感じです。
ブログの記事ではそこまでの推敲はしませんが、記事を公開したあとも細かい修正を重ねています。
読み返せば直すべきことに気がつく
まずは、自分の書いたものを最低5回、できれば10回読み返しましょう。音読すればさらに効果的です。直すべきところがきっとみつかります。
誤字脱字、「てにをは」レベルの細かい言葉づかい、句読点の打ち方、接続詞をどうするか、概念・形容についてのより適切な言い回し等に気がつくでしょう。
あるいは「前提となる説明が足りない」「この一般論は不要」「結論をもう一歩踏み込む」といったことに気づいて、文を加えたり削除したりすることになるかもしれない。そして、直したらまた読み返すのです。
「1文字でも少なく」と考える
では、読み返して推敲するとき、何を考えるべきか。これも、ひとつだけアドバイスするなら、「1文字でも少なくできる箇所はないか」と考えることです。
私たちが書く文章のほとんどは、削れるところがたくさんあります。
たとえば、↑この文をつぎのように書くことが多いのです。
「そもそも、私たちが書いている文章というもののほとんどについて言えることとして、削ることができる余計な箇所が非常に多くなってしまうということがあります。」
このような文を「1文字でも少なく」と考えながら読み返して、削ったり言い替えたりしていく。
「~ている」「~というもの」のほとんどは要りません。「書いている→書く」「文章というもの→文章」でいい。「非常に」のような強調も不要なことが多い。「削ることができる余計な」のような重複もよくあること。「そもそも」のような接続詞も削れる可能性が高い。
学生さんの作文を添削していると、よく書けている文章でも、少し推敲しただけで情報量を落とさず2~3割は削れます。そして、削ることでたしかに文章がよくなるのです。
文字数が少なければいいというものではない? たしかにそうです。しかし初心者の場合は、とくに就活の作文では「1文字でも少ないほうがいい」と考えて差しつかえないです。
まずはこの2つを行うのが現実的
文章を向上させるのに有効なアドバイスは、ほかにいくらでもあるでしょう。でも、そんなに多くのことは、ふつうは消化できません。
ここで述べた2つのことを、まずは行ってみましょう。それが現実的です。
・書いたものを何度も読み返す
・1文字でも少なくしようと考える
これは、短時間でお伝えできることとしては、かなり有効なアドバイスです。それは、学生さんに文章の添削やアドバイスを行ってきた私の経験で確認済みです。
ただし、このアドバイスが有効なのは、ある程度は「書けている」人だけです。「そもそも何も書けない」「何を書くか、考えがまとまらない」「要らないところを削ると文章がほとんど残らない」といった人には、このアドバイスはあまり役立ちません。
こういう場合は別次元の対策が必要です。それは別の機会に。
「就活の作文で何を書くか」について参考となる記事。これまでの活動の場における「自分の貢献」「努力・工夫」に目を向けることが大事。意外にできていない。