親と教師のそういち就活研究所

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事務職の就職先にはどのようなものがあるか

事務職とは、バックオフィスの業務

私がお会いした新卒の就活生の方々のうち、最も多いのは事務職の志望者です。

事務職とは何か。「事務の仕事をする人」というのは、狭すぎるイメージです。ここでは、「事務職=バックオフィスの業務」としましょう。

それはスーツを着たホワイトカラーの仕事であっても営業などの外回りの仕事ではないし、社内での仕事であっても生産現場や店舗などの「現場」の仕事でもない。

この「バックオフィスの業務」は、パソコンや書類に向かういわゆる「事務」的な仕事だけでなく、社内外への説明・説得、企画や調査、現場の指揮やサポート、社内の施設・物品の管理など、幅広い業務が含まれます。

これは「一般管理部門」の業務とほぼイコールですが、企画の仕事なども含む、それよりはやや広い範囲をさしています。

ただ、この記事では「事務職とはどんな仕事か」はこのくらいにして、新卒の場合「事務職でどういう就職先が考えられるか」について述べます。

事務職の求人はどこにある? 

就活生で「事務職志望だけど、求人をどう探したらいいかわからない」という人も多いです。

学生さんがまず応募を考える大手企業の多くは「総合職」での採用で、かならずしも事務職に配属されるとは限らない。営業職への配属が大部分という会社もかなりある。

「事務職」を募集している大企業の求人もありますが、数は少なく、狭き門のようです。事務職の求人はどこにある?

事務職は、つぎの選択肢に注目

事務職として就職したい場合、つぎの選択肢に注目するといいでしょう。なお、ここでは公務員などの公的機関の仕事は除きます。公務員については別に取り上げます。 

①総合職がバックオフィス業務の要員である大企業
②ビジネスサポート系企業
③ホールディングスの会社(中小・中堅企業のグループ持ち株会社)
④一般中小企業の事務職
⑤公益法人(とくに業界団体)
⑥その他の一般企業以外の法人
・病院やクリニック(健診機関含む)の事務職
・健康保険組合の職員
・学校(高校・専門学校・大学等)の職員
・士業(法律・会計・特許などの事務所)の事務職

これらの選択肢があることを意識して、「〇〇ナビ」のサイト、大学求人、ハローワーク求人などを探すのです。

この記事では、上記のうち「①総合職がバックオフィス業務の要員である大企業」「②ビジネスサポート系企業」「③ホールディングスの会社」「④一般中小企業の事務職」について述べます。「⑤公益法人」以下については、続きの別記事で。

①総合職がバックオフィス業務の要員である大企業

いわゆるインフラ系(電力、鉄道等の運輸大手など)や一部の製造業・小売業などはこれにあたります。

これらの企業は、中心的な事業にいわゆる営業活動がそれほど存在しないか、生産や営業の現場と本社の組織が、採用などにおいて別々になっています。

つまり、新卒で採用された者は、数か月~数年の「現場」での経験を除いては、基本的にバックオフィス業務を担当するという前提になっているのです。

ただしこのような企業は数が限られ、新卒採用の人数も企業規模の割に少ないです。そして事務職志向の多くの学生が応募するので、競争率もきわめて高い。入社のハードルは非常に高いです。

そこで、こういう難関の大手以外の選択肢も、考える必要があります。

②ビジネスサポート系企業

とくにこの20~30年、大手企業はグループ企業の人事労務・経理・総務などの業務を一括して行う「ビジネスサポート」業務の子会社を設立するようになりました。

これはグループ各社に分散している、共通性の高い業務を一か所で集中して専門的に行ったほうが効率的で、子会社化によって人件費削減もできるという考えからです。

現在はそのようなビジネスサポート系企業が、業界を問わずさまざまな企業グループの子会社として設立されています。

ビジネスサポート系企業は、会社によって経理中心、人事労務中心などメインの業務に違いがあります。システムの開発・管理や顧客管理・営業支援をメインとする場合もあります。また、グループ以外の業務を多く受注している企業もある。

その事業形態はさまざまですが、いずれにせよ「バックオフィス業務」を本業としているので、このような会社では「総合職」と求人票にあっても、ほとんどの場合、内容的には事務職の採用になります。

また、近年は特定の大企業のグループに属さない、独立系のビジネスサポート系の企業も増えています。

③ホールディングスの会社(中小のグループ持ち株会社)

ここで「ホールディングスの会社」とは、グループ企業を統括・管理する持ち株会社としてバックオフィス的な業務を行う会社です。

このような「ホールディングスの会社」というと、ふつうは大企業をイメージしますが、中小・中堅企業でもそのような会社はあります。たとえば数百人規模の企業グループ(数社程度)を統括する、社員が「何十人」という規模の持ち株会社というのもあります。

こうした会社は、グループ会社の人事労務・経理・総務の業務をまとめて行っていることがかなり一般的です。その点で上記のビジネスサポート系企業とも似たところがあります。

このような「ホールディングスの会社」は、原則として営業や生産の部門を持っていません(営業や生産の業務は子会社が行っている)。そこで、基本的にはバックオフィス業務だけで構成されているのです。

④一般中小企業の事務職

中小企業では職種別採用が多い

大企業の新卒採用では配属先や担当業務を特定しない総合職採用が一般的ですが、中小企業の新卒採用では「事務職」「営業職」などの職種ごとの採用のほうが一般的です。事務職では、「経理」「総務」「営業事務」「貿易事務」「購買」など、さらに具体的に職種が明記されていることも多いです。

そこで事務職への志向が強い人は、大企業だけでなく、中小企業の求人にあたってみるといいでしょう。

 条件の良い事務職は競争率が高い

ただし、中小企業の事務職は各社の採用人数は少なく、「1人」であることもしばしばです。大都市のオフィス街にある、給与条件などが比較的良い会社の事務職は、中小企業であっても、多くの場合競争率は数十倍にはなります。

そして地方都市の場合は、比較的条件の良い事務職の新卒採用は非常に数が限られます。

しかし、大都市では競争率はかなり高くても一定の求人が出るので、事務職志望の方はぜひあたってみましょう。

そして、人事労務・総務・経理などの一般管理部門の業務は、業界がちがっても共通性が高いです。

そこで、中小企業の事務職を志望する方は業界にこだわらず、事務職求人があるなら積極的に受けていくのがいいでしょう。ある程度好条件の事務職求人は、貴重なのです。

 事務職で募集して他部門に配属するケースに注意

ただし、一部のシステム開発、小売・販売業、介護関係などの企業のなかには「事務職」で募集・採用して、その後人材不足の他部門(システム開発、販売・営業・介護の現場)に配属するというケースがあるので注意してください(これは採用としてアンフェアです)。

事務職なのに採用人数が多い場合などは、その疑いがあるので、慎重に確認することが必要です。

 「一般事務職」と「総合職的な事務職」

ここで「一般事務職」という職種についても説明しておきます。一般事務職とは「会社のなかで上級の管理職や経営層への昇進を前提としない事務職」と、とりあえず定義できるでしょう。

そして、法的にはともかく、女子社員をこの一般事務職として採用するのが一般的です。

これに対し、「総合職的な事務職」もあります。つまり「将来的には事務部門の課長や部長などの管理職をめざす前提の事務職」です。

ただ「総合職的」といっても、中小企業の場合には、大企業の総合職とはちがって営業や生産現場なども含めた幅広い配属の可能性は低く、異動は事務職(バックオフィス業務)の範囲内であるのが一般的です。

中小企業の事務職求人では、単に「事務職」(あるいは「経理事務」「総務事務」「営業事務」など)とある場合は、求人票をよく読んだり会社の話を聞いたりして、その求人が一般事務的なものか、それとも総合職的なものなのかを確認する必要があります。

 女子の「総合職的な事務職」は増えてきた

そして、近年は女子を事務職として採用する場合でも、総合職的なかたちで採用することも増えてきました。

また、「一般事務」で女子を採用するとしても、昭和の頃に一般的だったように「結婚退職する前提で、淡々とした補助的な仕事」を行うとはかぎりません。

近年は結婚後も勤め続ける女子社員が大半ですから、長期のキャリアを前提に、女子の一般事務職に本格的・専門的な仕事を担当させることが、東京などの大都市圏ではかなり増えてきました。しかし、多くの地方都市ではまだまだ限られます。

男子新卒の「一般事務職」は限られるのが実態

男子学生の方から「自分は一般事務職がいいのですが、男子はダメですか」と聞かれたことが何度かあります。基本的には、男性が一般事務職として採用されることは難しいのが実態です。

中小企業において新卒で男子の事務職を採用する場合、総合職的な採用が一般的です。ただし、近年は「男性の一般事務職も可」という会社もあります。しかし少数ですし、ほとんどは「とくに男性が欲しい」ということでもない。

やはり一般事務での男性の採用は例外的、というのが実態です(この点は法的な問題は別にして、実態としてそうだと述べています)。

「公益法人など一般企業以外」は別記事で

今回はここまで。つぎは「公益法人」などの一般企業以外の事務職について述べます。

続きの記事

 

 

 

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