親と教師のそういち就活研究所

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事務職の就職先としての病院・クリニック(医療系事務職)

事務職の選択肢のなかの「医療系事務職」

私がお会いした就活生で、最も多いのは事務職志望の方でした。このブログでは「事務職の就職先にはどのような選択肢があるか(公務員除く)」について、これまで2回述べてきました。1回目は一般企業の事務職。2回目は業界団体を中心とする公益法人。

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このほか、新卒の事務職の就職先としては、おもにつぎのものがあります。このうち今回は「病院・クリニックの事務職」、つまり「医療系の事務職」について特徴・ポイントを解説します。

病院やクリニックの事務職(医療系事務職)
・健康保険組合の職員
・学校(専門学校・大学等)の職員
・士業(法律・会計・特許などの事務所)の事務職

とくに女子の就活生で「医療系の事務職」を志望する方は比較的多いです。一般企業の事務職と併願することもかなりあります。

また新卒求人としては、ある程度の数の求人が出ている一般的な分野でもあります。

医療系事務職の選択肢

なお法律では、20床以上の入院ベッドを持つ医療機関が「病院」で、それより小規模な医療機関は「診療所」(いわゆるクリニック)です。

ここではばくぜんと、病院はある程度以上大きな医療機関で、クリニックは個人病院などの比較的小規模なもの、というイメージでいいでしょう。

そして医療系の事務職の就職先としては、おもに以下の選択肢が考えられます(公的病院は除く)。

(医療系の事務職)
・大きな病院(大学病院含む)
・クリニック(個人病院など)
・複数のクリニックを経営する医療法人
・健診専門のクリニック

この記事では、まず医療系事務全般に共通する特徴を述べ、そのあと個々の選択肢について解説します。

資格は不要、一定の対人力・ストレス耐性は必要

まず、医療系事務職では、新卒の場合「資格」は基本的に不要です。

ときどき就活生の方から「病院の事務は、資格(診療報酬計算の医療事務など)が必要ですか?」と聞かれます。

答えとしては、新卒の場合にはそうした資格は不要な求人がほとんどです。何らかの資格が必要な場合は、就職してから取得することになります。

そして、医療系の事務職は「人に接することが苦にならない(一定の対人力)」「ストレス耐性」といった資質が求められる傾向があります。

医療系の事務職は、多くの場合患者さんと頻繁に接します。患者さんと接することの少ないバックオフィス的な業務もありますが、全体の一部です。

また医療系事務職は、医師・看護師・その他の医療技術者など、さまざまな専門家とともに医療現場を支える仕事です。つまり、絶えず人と接する、人とともに行う仕事なのです。

そして医療現場には、一般的なオフィスなどとは異なる緊張感があります。

その現場において、若い事務職員は組織の一員として最も「下」の立場です。医療の専門家や事務方の上司などから日々指示や指導を受け、その指示や指導が、緊張感のなかできびしいものになるのは珍しくありません。

たとえば、患者にはやさしい医師や看護師さんが、若い事務員にはきびしかったりすることもある。

そこで、怖がる必要はありませんが、ある程度のストレス耐性があったほうがいいのです。

要するに医療系の事務職は、「緊張感の高い現場」での事務職だということです。

大きな病院では男子にもチャンスが

つぎに個々の選択肢について。まず「大きな病院」について。

ここで「大きな病院」とは病床が数百以上、典型的には1000床以上あって、いくつかの診療科があるような、一般にいう「総合病院」的な医療機関です。法律上の区分もありますが、ここでは立ち入りません。

このような病院にはスタッフ(医師・看護師・その他の医療技術者・事務職など)が数百人から1000人単位で働いています。病床数よりやや多いくらいのスタッフがいるのです。事務職は全スタッフの1割程度が一般的です。

大きな病院の事務職は、男子にもチャンスがあります。あえてそれを言うのは、医療系の事務職は女子の採用がやはり多いからです。とくにクリニックでは、男子の事務職の採用は限られます。

それは本来のあり方ではないのでしょうが、実情としてはそうなっています。

しかし大きな病院では、男子を事務方の幹部候補生(総合職)として採用することがあるのです。

ただし、こうした総合職的な求人では「男女を採用」というケースが多く、必ずしも男子が有利ということではありません。

大きな病院の総合職・一般職

大きな病院の事務部門には、おおざっぱに「総務・経理などの一般的な事務部門」「診療現場の管理・サポート」「物品・施設の管理」の3つの業務があります(さらに細かく分けることはできますが、大きく分ければ、ということ)。

そして「総合職」の場合は、ジョブローテーションとしてこの3つの業務を数年程度ごとに異動しながらすべて経験するのが一般的です。そして、ひととおり経験したうえで、順調にいけばどこかの部門の管理職になるわけです。

これに対し、特定部門での業務を長く続ける前提の「一般職」的な事務職の採用もあります。この一般職的な採用では、女子の比率が圧倒的に高いです。

大きな病院の事務職には、このように総合職的なものと一般職的なものがあります。

そして大きな病院の総合職は、求める人材の要求水準は高く、競争率はふつうは数十倍以上で難関といえます。有名な大学病院などはとくに難関です。また一般職も多くの応募があり、かなりの競争倍率になります。

クリニックの事務職

医療系の事務職には病院のほか、クリニックの事務職もあります。クリニックは個人経営の小規模なものが多いですが、スタッフ数十人規模の比較的大規模なもの(入院施設はない)もあります。

そして、基本的には地域医療を担いますが、なかにはきわめて専門性が高く、全国から患者さんが来るような病院もあります。

新卒の就職先としては、経営の安定性・継続性や待遇面などから、まず比較的規模が大きい(あるいはとくに専門性の高い)、個人経営的なあり方を超えるクリニックにまず目を向けるといいでしょう。毎年かそれに近い頻度で新卒採用を行うのは、そのようなクリニックです。

そして、クリニックの事務職の多くは、先ほど述べたように女子の採用を前提としています。男子の採用は少ないです。

そして事務職ではあっても、かなりの場合、受付などの接客業務の比重が高いです。デスクワークは業務の一部であるのが一般的です。また小規模な組織なので、1人で患者のデータ入力から備品の管理まで、さまざまな業務を担当することも多いです。

クリニックは、事業者としての規模は小さいですが、事務職は比較的多くの応募があります。とくに大都市のある程度待遇が良い求人は、それなりの人気があります。

なお、選考のプロセスや採用基準については、個人経営的なためか、クリニックによってちがいが大きいように、私は感じます。ただ、基本的には人と接することが苦にならないタイプの方は、採用されやすい傾向があります。

また、経営状況もさまざまです。これはクリニックだけでなく病院でもかなりいえることです。医療法人だから安定しているとは限りません。なかには経営が不安定なクリニック・病院もあるわけです。

ただし、本当に不安定な場合は、新卒採用は行わないことが多いですから、新卒求人を出しているところは、基本的には一定レベル以上の状態だと、とりあえずは推測できます。

複数のクリニックを経営する医療法人

病院経営にはさまざまなスケールがあるので、大きな病院と小さなクリニックの中間といえる形態もあります。スタッフが数十人から200~300人くらいの病院は、これにあたります。

このような「中間」の規模の病院は、病院によって大病院的なところもあれば、クリニック的なところもあります。両者の要素が混じりあう病院もある。そこで、個別の求人について内容を具体的に確かめて検討することがとくに大事です。

そして、医療系の事務職の選択肢として「複数のクリニックを経営する医療法人」というカテゴリーもあります。

たとえば数か所から10数か所くらいのクリニックを経営して、全体でスタッフ数は数十~数百人という規模の医療法人が、各地にあります。

こうした医療法人の事務職には、系列のクリニックでの勤務と全体を統括する本部の事務職とがあります。そして、どちらの勤務が中心であるかは求人によって異なります(両方が同程度の場合もある)。

「複数のクリニックを経営する医療法人」の場合も、女性の採用が多い傾向があります。ただし、本部スタッフとして男子も採用しているケースもみられます。

健診クリニック

医療系の事務職として、もうひとつ有力な選択肢として健診クリニックのスタッフがあります。

ここで「健診クリニック」とは、健康診断のみを行う(治療はしない)クリニックのことで、医療法人やその他の公益法人が運営しています。

事務職の場合は、そこで接客対応やデータ管理などを行います。また出張で集団健診を行う場合には、医療技術者とともにさまざま手配や会場の設営などを行うのです(法人によっては地方出張もある)。

だから、事務職といっても「現場で動く」という要素がかなりあります。ただし、その「現場」は患者を治療する医療現場ほどの特別な緊張感を伴なうものではありません。

その一方で、とくに高額なサービスを行う健診クリニックでは、高い接客レベルが求められるという面があります。

健診クリニックは、個人の利用者もいますが、多くの場合、売上の中心は契約を結んだ企業・法人の従業員による健診です(集団検診と個別の両方がある)。学校などの公共系の仕事が中心の法人もある。

大手企業などの優良顧客と多く契約を結んでいる法人は、基本的に安定経営となっています。そのようなクリニックの施設は、立派できれいなことが多いです。

健診クリニックの事務職は、女子の採用がとくに多くを占めています。そして「接客」の要素が重要であり、それが採用基準に大きく影響していると、私は感じます。

健診クリニックは、医療現場ほどの緊張感はない、清潔感もあるといったイメージなどから、かなり人気があります。大都市で待遇の比較的良い求人の場合は、数十倍以上の競争率になることも。そうでなくても10~20倍の競争率は一般的です。

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以上、医療系の事務職について、これで網羅できているわけではありませんが、新卒の就職先として比較的多くの求人が出ている、おもなカテゴリーをご紹介しました。

医療系の事務職を志望する就活生の方は、どのような「医療系」をイメージしているのか、上記のカテゴリーを前提に(どれにあてはまるかを)明確にする必要があるでしょう。

 

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