親と教師のそういち就活研究所

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「安定した・優位な営業」の仕事に目を向ける

営業がいやだから事務職?

このブログでは「ホワイトカラーになるのも大変」「事務職になるには」といったテーマの記事が何本かあります。これまで私がお会いした就活生の方で最も多いのは事務職の志望者で、それは世の中の傾向の反映だと思うからです。

ただ、事務職志望者の多くは、積極的に「事務職がしたい」ということではないようです。つまり「したくないこと」があって、それをしなくて済む仕事として消去法的に事務職を志向している。

「したくないこと」とは、まず「屋外での肉体的作業」があります(ここでは立ち入りません)。そして、もうひとつが「営業」です。「営業がいやだから事務職」という人はかなりいます。

ここで営業とは「店舗や販売のカウンター以外の場所で(顧客の元へ出向くなどして)商談を行い、モノやサービスを販売する仕事」のことです。店舗やカウンターで売るのは「販売」という別の種類の仕事とします。

営業職も視野に入れると可能性が広がる

営業の仕事はたしかに、いろいろなプレッシャーがあります。とくに売上(数字)のプレッシャーがある。また、商談相手から拒否されることも多々あり、それもつらい。

数字のプレッシャーも拒否されることも「まあ大丈夫」というタフな人もいます。そういう人は、もちろん企業からは評価されるでしょう。

でも、おとなしめで内向的な面もある人は、「だから営業はやりたくない」と思うわけです。就活生の頃の私も、そうでした。そこで、事務職に配属される可能性の高い会社を中心に受けて、そのなかで受かった運輸系の会社(おもに本社業務)に入りました。

ただし、そういう会社は昔も今も競争率が高い(大卒の採用人数が少ない)です。私も何社か受けて、どうにか1社だけ受かったのです。

事務職の仕事は、これからは先細りだとよく言われます。私もそれは必然だと思います。しかし、そうした仕事も就職市場のなかで決して見当たらないわけではない。

ただし、営業職という分野についても視野に入れると、選択肢や可能性が広がるとも思います。

「安定した・優位な営業」とは

そこで目を向けてほしいのが、つぎのような企業における営業職です。これを「安定した・優位な営業職」(以下、短く「安定した営業職」)と呼ぶことにします。

それはまず、①業界でトップシェアの、優位な地位を占める企業です。あるいは、②トップといえなくても、安定的な既存顧客を抱えている企業

そういう競争力のある(商品が安定して売れる)会社での営業は、数字のプレッシャーは比較的少ないです。

ここでいう「安定した営業」は、いわゆる「ルート営業」と共通点がありますが、それ以上の恵まれた条件を備えたものです。ルート営業は、「取引実績のある顧客への営業」を意味する言葉です。「安定した営業」はそれにとどまらない、市場での優位や、優良顧客との安定した関係にもとづく営業を指しています。

トップシェアの企業

トップシェアの企業は、もちろん有名な大企業もありますが、知られていない中小企業にも数多くあります。大きな業界のトップは大企業ですが、世の中にはニッチな業界が数多くあり、その数だけトップ企業があるのです。

たとえば、私たちがあまり知らない(意識しない)、生産現場や専門家向けの特殊な器機あるいは資材をつくる会社。

そのなかには、特殊ではない、おなじみのモノにかかわる会社もあります。つまり、おなじみのモノを構成するパーツや素材をつくる、つくるための機械をつくる、おさめる容器をつくる等々の会社です。

そういう会社のなかに、中小企業であっても国内外で高いシェアを占める会社があるわけです。

そして、「特殊な器機・資材」のなかには、継続的に購入される消耗品や、定期的なメンテナンスや買い替えの需要があるものも多いです。安定した取引が見込めるわけです。

メーカー以外でも、たとえば専門的な商社のなかに「〇〇の輸入に関しては国内トップ」「〇〇業界向けの〇〇の販売ではトップ」といった会社もあります。

トップでなくても安定した顧客をかかえる企業

また、トップシェアでなくても、安定した既存顧客をかかえている企業の営業も、ここでいう「安定した営業」といえます。

つまり、トップ企業に準ずる2番手3番手の企業や、中小企業であっても、その分野では大企業と互角である企業などのことです。

このほか、業界で有力とはいえなくても取引先との関係がとくに安定している、というパターンもあります。たとえば大手企業のグループ会社で、グループ内の取引がメインである会社(メーカーである親会社向けの原材料を輸入・販売する会社など)。あるいは、電力や鉄道などのインフラ系のような、安定性がとくに高い大企業と長い取引がある会社など。

良い就職先を見きわめるうえで「その会社がどれだけ安定した顧客をかかえているか」は大事な視点です。

「ニーズのある人材」になるのに有利な仕事

こうした「安定した営業」の仕事を、就活生の多くは意識していないことが多いです。とくに事務職志望の方の場合、関心が薄いせいか、営業というと「飛び込みの訪問セールス」をまず思い浮かべる傾向があります。

ここでいう「安定した・優位な営業」は、営業のあり方として「飛び込みの訪問セールス」とは大きく異なっています

もちろん、営業職ですから数字(売上)を追求するなど、事務職にはない緊張感はあるでしょう。

しかし「安定した営業」の仕事では、顧客開拓にむけた行動力や、断られてもへこたれない打たれ強さは、それほど重要ではありません。事務職とも共通するような「信頼のおける、処理能力の高いバランスの良い組織人」が求められることは多いです

そして、「トップシェア」やそれに準ずる企業の営業職は、有力な企業での中核的な仕事です。その世界で経験を積むことは、「稼げる人材」「ニーズのある人材」になるうえで有利なはずです。

これからの社会で、営業職としてモノ・サービスを売る能力・経験はますます重要になるはずです。やはり自動化・機械化がむずかしい仕事だからです。とくに、すぐれた技術やノウハウを持つ企業での経験は、おおいに価値があるでしょう。

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営業というと「訪問セールス」のイメージくらいしかないために「営業はいやだ」と思っていた人は、ここでいう「安定した営業」の仕事も視野に入れるといいと思います。ただし、トップシェアの有力な企業は、採用基準や競争率も相応に高いということはありますが。

私は就活の方向性で迷っている方に、以上のような話をしたことが何度もあります。でもやはり「営業より事務職がいいです」という方のほうが多い。それでも「安定した営業職」というのは、ひとつの視点として知っておいていいはずです。

 

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