親と教師のそういち就活研究所

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中小企業の新卒求人の特徴

大学などを卒業する新卒生の多くは中小企業に就職します。それなのに就活に関する一般向けの情報は、大企業への就活を前提としたものが多いです。しかし、このブログでは中小企業への就職を前提とした記事を積極的に書いています。

私はこれまで何万という中小企業の新卒求人を検討し、数百の中小企業を訪問して、就活生の方に情報提供をしてきました。この記事は、その経験にもとづいたものです。

0.そもそも「中小企業」とは

就活において、会社の規模をみるうえで最も重要な数字は従業員数です。中小企業とは「数人~数百人」規模の会社のことだと考えていいでしょう(法令や統計上の区分もありますが、ここでは立ち入りません)。

そして「1000~2000人」規模だと、中小企業というより「中堅企業」という感じです。それより大きいなら「大企業」といえるでしょう。以上は私の経験に基づくひとつの見方ですが、参考にはなると思います。

ただし「どのくらいの人数なら、会社として大きい・小さいといえるか」は、業界によってちがいます。

たとえば商社(多くは特定分野の商品を扱う専門商社)で「〇百人」だと、相当な規模の会社であり「中小」という感じではないです。あるいは出版社で「〇百人」なら、かなり有力な出版社です。でも製造業なら「〇百人」は、やはり大企業とは言えません。

それでも、まずはおおまかに「数人~数百人」を中小企業、「1000~2000人」を中堅企業と考えていいと思います。

ここでは中小企業と中堅企業をあわせた「中小・中堅企業」の求人の特徴について述べます。「中小・中堅企業」というのは煩雑なので、以下単に「中小企業」といいます。

そしてここで述べるのは、あくまで「求人としての(大企業と比較した)特徴」であって、待遇などの「職場としての特徴」とはやや異なります(「職場としての特徴」については別の機会に)。

1.採用の「職種」が明確なことが多い

大企業では「総合職」(どの部署・業務に配属されるかが明確でない)の採用が多いです。これに対し、中小・中堅企業では「事務」「営業」「販売」「SE・プログラマ」「製造」などの職種ごとの募集が多いです。

つまり「入社後、どのような仕事に従事するか」が比較的明確なのです。

さらに「経理」「営業事務」「海外営業」「デザイン」「〇〇オペレーター」「品質管理」といったより具体的な職種の求人もあります。つまり、特定の職種・業務を志向する人には、向いている面があるわけです。

2.採用人数が少なく、毎年採用するとは限らない

中小・中堅企業の新卒採用では、1人から数人程度の募集がほとんどです。会社が小規模であれば、各年の新卒採用人数は当然限られます。

10人~数十人の求人を出している場合は、事業が急拡大している、離職率が高いなどの特別な事情があるので、その理由を確認する必要があります。

さらに、毎年新卒を採用するとは限らないということもあります。

去年は新卒募集の求人を出していた企業が今年は出していない、去年は「営業職」と「事務職」の求人が出ていたのに今年は「営業職」しか出ていない、といったことがある。さらに「新卒採用は久しぶり(数年ぶり)」「新卒採用は初めて」ということもあります。

3.業界や職種の幅は意外と広い

中小企業は日本の企業の大多数を占めているので、ほぼあらゆる業界や業務をカバーしています。

たしかに一部の花形的な仕事のなかには、大企業でしか成立し得ないものもあります。たとえば国際線のキャビンアテンダントや、大規模な都市開発の仕事などはそうかもしれません。

しかしそういうもの以外なら、規模を問わなければ「なんでもある」ということです。

「中小企業」といわれて多くの人が連想する、いかにも「町工場」「個人商店」的な会社もありますが、先端的なインターネット企業、コンサルティングなどの知的な専門性の高い仕事、国際性の高い仕事、いわゆるクリエィティブな方面の仕事も、数は限られますがあります。

なかには「こんな仕事があったのか」と感心するような特殊な求人もあります。また、大企業のグループ会社(子会社)である中小企業もあり、その場合はオフィスの構えや社風などが大企業的な場合もあります。

要するに「中小企業もさまざま」ということです。

ただし、その中でも学生が多く集まる人気の求人というのはあります。それらは採用人数も少ないので、ハードルも高いです。

なお、ここで述べている「幅広さ」は、首都圏や大阪圏(とくに首都圏)においていえることで、その他の地方都市ではあてはまりません。地方都市での新卒求人は、質・量ともに限られるのです。

そして、この記事・このブログの中小企業求人についての述べることは、基本的に首都圏を前提としています。

4.ほぼ1年を通して新しい求人が出ている

大企業(とくに有名な企業)の新卒求人は、「解禁」から1~2か月で募集が終わるのが一般的です。これに対し中小企業の新卒求人は、年度の初め頃から年度末まで、ほぼ1年を通じて求人が出ています。

つまり企業によって募集開始の時期がさまざまなのです。

中小企業は会社ごとに自分たちに適切と思われるタイミングで新卒求人を出しています。そして、多くの場合求人を出して2~3か月以内に(人気のある求人はもっと短期間で)採用を決めて「募集終了」となります。

ただし、募集が多い時期というのはやはりあります。大企業の採用活動がひと段落してから数か月(おおむね11月頃まで)が、中小企業の採用活動のおもなシーズンです。

しかし冬の季節になり、さらに年を越しても、数は減りますが新しい求人はまだ出てきます。あるいは、以前から出ていた求人が残っていたりもします(2月、3月になるとさすがに少なくなります)。

だから、大企業や公務員の選考でうまくいかなかったとき、中小企業の求人がまだあるということです。しかしやはり、選択肢が豊富にあるのは、夏頃のシーズンまでです。

5.選考過程がシンプル

中小・中堅企業の選考プロセスは、典型的にはつぎのようなものです。

応募書類を企業に提出(郵送が多い)→書類選考→1回目の面接(人事担当部署による)→2回目の面接(役員・経営者)→内定

これがシンプルな基本形です。

この基本形に、場合によってつぎのステップが加わることもあります。

・応募前の説明会参加
・1回目、あるいは2回目の面接時における筆記試験
・3回目の社長などによる最終面接

大企業の選考で一般的なグループディスカッションやグループワークは、行うこともありますが例外的です。「インターン」といわれるある種の選考過程も、普通はありません。

面接についても上記のとおりせいぜい3回までで、大企業のようにそれ以上の回数を重ねることは少ない。そこで、選考が始まるとたいてい1か月以内には決着します。中には1回の面接で決まる会社もあります。

こういう、シンプルな選考過程について「それではいい加減な選考になってしまうのでは」と思う人もいますが、私はそうは思いません。応募人数、採用数からみて妥当なことだと思うのです。

また、それは「余計な時間がかからない」という点で応募する就活生の利益にもなっているはずです。

ただし、中小・中堅企業のなかにも、選考のスピードが遅い会社はあります。たとえば面接をしてから1か月2か月経って、やっと「つぎの面接の連絡」が来たりするのです。

こういう会社には、担当者が採用活動に時間を割けない多忙な状況だったり、担当者の個人的資質に問題があったり、そもそも社風がきわめてのんびりしていたり等、いろんなケースがあります。いずれにせよやはり「残念」と言わざるを得ません。

6.既卒生にもチャンスがある

大企業とは違って、中小企業の新卒求人は、卒業年次の「新卒」だけでなく、未就職の卒業生(これを「既卒生」という)の応募が可能なことも多いです。私の経験では、中小企業の新卒求人の大半(少なくとも6~7割)がそのような「既卒応募可」の求人です。

この「既卒」には未就職の人のほか「一度は就職して、仕事を続けながら(あるいは仕事を辞めて)新たな職探しをしている人」も含みます。

「既卒何年目まで応募可能か」は企業によってちがいますが、「既卒3年目まで」が最も多いです。つまり、年齢でいえば20代半ば(25歳くらい)までの人。

しかし「1年目まで」という企業もかなりありますし、既卒数年~10年目でも応募できる企業も、多くはありませんが存在します。

ただし「既卒可」の求人であっても、既卒生は新卒より不利ということは一般に言えます。

それでも、既卒であることがそれほどマイナスにならないケースも少なくありません。新卒と既卒の両方から応募があって、採用されたのが既卒の人だったということもあります。

これは多くの大企業の新卒求人とは異なります。大企業の新卒求人では、既卒生の応募ができないか、大幅に不利であることが一般的です。つまり、中小企業の新卒求人は、かなりの場合既卒生にもチャンスがあるのです。

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以上のような特徴を持つ中小企業の新卒求人ですが、その多くは「〇〇ナビ」などの就活サイトには出ていません。大手の就活サイトを利用するコストは、中小企業にとっては大きな負担だからです。そこで中小企業は、ハローワークなどの利用コストがかからないサービスで新卒求人を出すことが多いです。

「中小企業の新卒求人をどうやって探すか」については、つぎの記事で述べています。

 

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