親と教師のそういち就活研究所

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自己分析の2つの思考法「抽象→具体」と「具体→抽象」・どちらも使える

この記事では、自己分析における、つぎの2つのやり方(思考法・考えの進め方)について解説します。そのキーワードは「具体」「抽象」です。

1.自分の特徴・強みは何か→それを説明できるエピソード
2.自分の大切な・印象的なエピソード→そこから言える自分の特徴・強み

「抽象→具体」と「具体→抽象」

自己PRの内容を考えるために自己分析を行うには、それ専用に使うノートやメモ帳を買ってきて、考えたこと、参考になる情報や言葉などをどんどん書き込んでいくといいでしょう。

こうした「ノート・メモの重要性」については、別の機会に述べます。ここではそのノートに向かってどう思考をすすめていくかについて述べます。

自己分析には、大きく2つのやり方(思考法・考えの進め方)があります。このどちらでもかまいません。

1.自分の特徴・強みは何か→それを説明できるエピソード(抽象→具体)
2.自分の大切な・印象的なエピソード→そこから言える自分の特徴・強み(具体→抽象)

この2つとも、人間がものを考えるときの本来的な頭の働きにもとづいています。だから、どちらのやり方も正しいのです。

しかし、「自己分析」「自己PR」についての解説では、どちらかといえば「具体的」であることを重視する傾向があります。「そこはもっと具体的に述べましょう」というアドバイスが、就活関連の表現の世界ではよくいわれます(そこにはそれなりの理由もありますが、ここでは立ち入りません)。

でもじつは、ものごとを理解・表現するには「具体」と「抽象」の両方が必要です。

この記事ではいくつかの「具体」「抽象」の例をあげながら、「どう考えるか」の道筋を説明していきます。

「具体」「抽象」とは(ご存じの方はとばしてください)

なお「具体」「抽象」という言葉について少し説明しておきます。ご存じかもしれませんが、大事なキーワードなので補足的に。ご存じの方はとばしてください。

まず、例をあげます。つぎの例では、最初の事物・ワードがいちばん具体的で、後にいくほど抽象的になります。

目の前のこのみかん→温州みかん→みかん→柑橘類→くだもの→青果→たべもの

「このみかん」がこの中では最も具体的で、「たべもの」が最も抽象的。

「具体」とは、個別的なものごとのありかたです。それに近いほど「具体的」。

一方「抽象」とは、さまざまな事物のあいだの共通性をイメージ・概念として認識することです。その共通性が、幅広い対象を含むものであるほど、より「抽象的」であるといえます。

そして「具体」と「抽象」は、つねに程度・レベルの問題です。

絶対的に抽象的(あるいは具体的)な概念や説明というのは、ありえません。程度の問題として「抽象性(具体性)のレベルが高い・低い」ということがあるだけです。

「具体」「抽象」の説明は一応このくらいにして、本題に入りましょう。

 「自分の強みは何か?」と問いかける

「抽象→具体」という1.のやり方では、まず「自分の強み・特徴は何か?」あるいは「人から強み・特徴についてどう言われるか?」を自分に問いかます。

たとえば、「優しくて気づかいがある」「頼りになる」「明るく周囲を和ませる」「元気で行動力がある」「根気強くやり抜くタイプ」「面倒見がよい」「工夫して取り組む」「サービス精神がある」等々の何かが思い浮かぶかもしれません。

そうしたら、それをノートに書いておく。複数思い浮かぶなら、複数書く。

その強みをあらわす、行動・出来事は?

そしてつぎは「その強みを発揮した・それをあらわす、自分の行動・出来事は?」と、自分に問いかけるのです。

「〇〇部の活動」「ゼミでの〇〇」「バイト先での〇〇」などの場面が浮かんでくれば、それを書く。ここでは「見出し」レベルの簡単な言葉でかまいません。

そして「面倒見が良い」という人が、「〇〇部の活動」でのことが浮かんでくるなら、そのときの自分の行動を思いかえしてみる。

たとえば「音楽サークルで、初心者の後輩たちに特別なレッスンをして面倒をみていた」といったことがあれば、それについて書く。

「下りていく」思考

ほかに例をあげれば、つぎのようなことです。

「行動力がある」→「〇〇料理店(個人店)でのアルバイト」→「集客のため店のチラシを近所の店・事業所に頼んで置いたり、店のSNSアカウントを立ち上げて発信したりした」

「工夫して取り組む」→「個人指導の学習塾のアルバイト」→「所定のカリキュラムのプラスアルファとして、子どもをひきつける導入の雑談ネタや、テキストに関連するクイズ問題などを独自に用意した」

最初はまとまった・整った表現でなくても大丈夫です。キーワードや断片的なセンテンスを書いておくだけでいい。まずはそこからです。

このようなプロセスは「行動力」のような抽象的な言葉から「〇〇店のバイト」→「チラシ配り、SNSでの発信」というふうに、より具体的なレベルへ考えをすすめているわけです。「抽象→具体」という方向です。

私はこういうのを「下りていく」思考だと言っています。高い抽象のレベルから下りていく、つまり「抽象のはしごをおりる」ということです。

「どんなことで頑張ったか」を問う・「上がっていく」思考

これに対し「具体→抽象」とすすむ、2.のやり方もあります。こちらは「上っていく」思考です。抽象のはしごをのぼっていくのです。

つまり、「自分の強み・特徴は何か」ということはとりあえず置いておく。

そしてまずは「学生時代に、自分はどんなことで頑張ったか・生き生きしていたか・楽しかったか・成果があったか」などと自分に問いかけます。

そこで「音楽サークルの活動かな」と思うかもしれない。そうしたら、さらに「その活動で、とくに自分が充実していたのはどんな場面だったか」を考える。

そしてたとえば「演奏では自分はトップクラスの花形ではなかった、でも高校からの経験者でそれなりのスキルはあった……サークルで活躍できたことというと、そういえば初心者の後輩の面倒をよくみていた。初心者の何人かを集めて特別レッスンをして、後輩から感謝され、先輩にも評価されたことがあった」などと思い出していく。

さらにそのような自分の行動・実績から、「自分の強みは、つまり・要するに何だといえるか?」と考えるのです。ここでの「つまり」「要するに」は、抽象のはしごをのぼるときの問いかけのコトバです。

そして、ここでの音楽サークルの人なら「たしかに面倒見はいいほうだ」といったことが浮かんでくるでしょう(ほかの表現もあり得えますが)。

どちらのやり方でもいい・柔軟に考える

以上「自分の強み→エピソード(抽象→具体)」と「エピソード→自分の強み(具体→抽象)」という2つの自己分析のやり方を紹介しました。

そこで大事なのは「どちらのやり方でもいい」ということです。どちらがやりやすいかは、学生さんによってちがうのです。

「学生時代に自分が頑張ったのはこれだ」というのが明確な人は「具体→抽象」でまずはやってみるといいと思います。しかし「これだ」というのが、当初ははっきりしていない人も多いです。そういう場合は「抽象→具体」のほうを試してみましょう。

だいじなのは「抽象→具体」「具体→抽象」のどちらかにこだわらないで、柔軟に考えることです。

どの抽象性のレベルで考えるかは、場合による

しかし、どちらかといえば「具体→抽象」にこだわることが、ときどき見受けられます。

その場合は「学生時代に頑張ったことを書き出してみよう」というところから作業を始めるのですが、そこで止まってしまうことがかなりあります。「頑張ったことなんて、とくにないなあ」という人は少なくありません。

でもそういう人が心のなかで、「自分とはこういう人間だ」という抽象的なイメージを持っていて、それを言語化できるということもある。

それならば「頑張ったこと」を書き出す作業ではなくて、「自分の強み・特徴」を言語化するところから始めて、そこから具体的なエピソードは何かないかと考えればよいでしょう。

人間の頭には「抽象的」な考えの引き出しもあれば、より「具体的」な記憶やイメージの引き出しもある。そして「どの抽象性(具体性)のレベルで考えれば頭が動きだすか」「下りていく思考がいいか、上っていくのがいいか」は、場合によるのです。

 

この記事の前提的な内容

この記事の続きといえる「書き方」についての記事