- 「大企業をめざす」という偏った前提
- 人気上位100社に入社するのはおよそ20人に1人
- 中小企業への就活の特徴・活動時期の幅広さ
- 中小企業を真剣に視野に入れる
- 「中小企業はみてこなかった」人は多いが…
- このブログは「中小企業バイアス」
「大企業をめざす」という偏った前提
学生の就活に関する情報には、「有名な大企業をめざす」という前提に立ったものが多いです。これをここでは「大企業バイアス(偏り)」と呼びましょう。
「大企業をめざす」という前提が「偏っている」というのは、大部分の学生たちの就職先は有名大企業ではなく、中小企業だからです。
この10年ほど(2010年代~)、各年の大学卒業者は50万人台で、そのうち就職するのは年によって変動があり、30万~40万人台。さらにその中で有名大企業(以下、単に大企業という)に就職するのは、その定義にもよりますが、数%かせいぜい1割です。
なお中小企業というのは、ここでは従業員数が1000~2000人ほどの「中堅企業」といえる規模の企業も含みます。これは本来は「中小・中堅企業」というべきかもしれませんが、煩雑なのでここでは「中小企業」と呼びます。
人気上位100社に入社するのはおよそ20人に1人
就活にくわしいコンサルタント・海老原嗣生さんによれば、2010年において「日経人気企業ランキング」の上位100社の新卒採用の人数は、推定で2万人ほどです(『就職に強い大学・学部』朝日新書、2012年、45~47ページ)。
この上位100社は、多くの人がイメージする「大企業」の典型です。
「2万人」というのは、就活生の20人に1人くらいということです。これは少し前の数字ですが、今も状況は大きくは変わっていないでしょう。
このように狭き門でも学生の多くは大企業を志向し、多くの就活サイトもその志向に沿った情報提供を行います。
大学でも、「有名な大企業にどれだけ学生が就職できたか」は大学の評価に直結するので、それを重視することになります。就活について解説する人たちも、やはり「大企業バイアス」のもとで発言することが多い。
中小企業への就活の特徴・活動時期の幅広さ
ただし、めざすのが大企業でも中小企業でも、就活の基本は同じです。しかし、やはりちがいもあるので、そこは押さえておきましょう。
まず「活動時期」のちがいがあります。中小企業のほうが「時期」の幅が広いのです。
大企業の新卒の採用活動は「解禁」から1~2か月のピークに集中しています(解禁以前から始まっている面もありますが、ここでは立ち入りません)。
一方、中小企業では「通年」に近い期間、採用活動が続きます。ただし、やはり年度の上半期、つまり春から秋までの採用が中心です。
そして中小企業でも、それぞれの企業の新卒求人の募集期間は限られています(多くは長くても2~3か月)。しかし、募集開始時期にばらつきがあるわけです。
春先から求人を出している会社もあれば、大企業の採用活動がひと段落してからの夏の時期に出す会社、あるいはもっと遅く募集を開始する会社もある。つまり、各社がそれぞれのタイミングや都合にあわせて求人を出している。そして採用の定員を満たしたところで、募集を打ち切る。
このように、中小企業の新卒採用では、求人が入れ替わりながら長期にわたって採用活動が続くのです。
中小企業の求人の特徴はほかにもありますが、別の記事で述べます。
とりあえずここでは「中小企業への就活」という、「大企業への就活」とはやや異なる世界があることを知っていただければと思います。
中小企業を真剣に視野に入れる
就活生の方々にぜひ言いたいのは、「中小企業にも早いうちから目を向けて活動してほしい」ということです。
就活生のなかには、春先の早いうちから「本命の大企業を受ける前の小手調べ」的に中小企業を受ける人もいます。しかしそうではなく、真剣に検討して受けてほしいのです。
「真剣」というのは「ほかに受かる企業がなければ、そこに入社してもいい」ということです。
「小手調べ」で中小企業を受ける人は、「入る気がない企業」でも受けることがありますが、もっと真剣に企業を選んで受けることをおすすめします。
たとえ大企業志望の人でも、就活の早い段階から本気で中小企業の求人を受け、できれば内(々)定を得ておくのは、プラスのことばかりです。
やはり、企業研究・応募書類作成・面接などのトレーニングになって、「本命」の大企業を受けるのに有利になります。
そして「入社してもいい」と思える企業から内(々)定を得ることができれば、自信と余裕が生まれる。それは多くの場合、就活に良い影響をあたえます。
一方、中小企業での就活で苦戦することもあるでしょう。そのときは、自分の就活の問題点を洗いなおして、体制を立て直せばいい。それが早いうちにできるなら、幸いなことです。
そして、本命の大企業での就活がうまくいかなかったときも、すぐに立て直しができます。「立て直し」には、まだ募集のある中小企業の求人をあたってみることですが、すでに中小企業をきちんと受けた経験があればスムースにできるのです。
「中小企業はみてこなかった」人は多いが…
でも、大企業の採用がひと段落したシーズン以後に私がお会いした(まだ決まっていない)就活生の方々の多くは、「これまで中小企業はみてこなかった」といいます。しかしその時点では、おもな大企業の求人はクローズしています。
それでどうしていいかわからなくなって、1か月2か月、あるいはそれ以上のあいだ活動がストップしてしまうこともある。
あるいは、あわてて就活エージェントのもとに駆け込んで、そこですすめられるままに企業を受けたりする。
それは、きちんと検討して受けるならいいのです(いい出会いも期待できます)。しかし、その人がそれまで受けていた有名な大企業とのギャップがあまりに大きいことがあります。たとえば慢性的に人手不足で離職率もきわめて高い企業・業界を受けていたりする。
大企業を受けるときは、いろんな希望や条件があったのに、中小企業を受けるときには投げやりな感じになってしまう。それまで中小企業を真剣に検討することをしてこなかったので、そうなるわけです。
やはり「大企業バイアス」からは距離を置いて、中小企業も視野に入れたほうがいいのです。
そのほうが、余計な戸惑いや苦しみが少なく、より納得のいく就活ができると思います。
「これまで中小企業に目を向けてこなかった」という人も、手遅れということはないはずです。今から考えればよいと思います。前に述べたように、中小企業の募集期間は相当な幅があるのですから。
たしかに「中小企業を検討する必要はあまりない」と思われる人もいないわけではありません。しかし、就活生のごく一部だと、私は思います。
このブログは「中小企業バイアス」
私は大企業志望の就活生を支援することもありましたが、それ以上に行ってきたのは中小企業への就活の支援です。
また、これまで数百社の中小企業を訪問し、人事担当者や経営者から採用についてお話を伺ったりもしてきました。
つまり、私の就活に関する知見には「中小企業バイアス」がかかっています。
このブログは、おもに中小企業への就職を前提とした内容になっています。そこで大企業志望の方には、不満足なところがあるはずです。
しかし、中小企業への就活を前提としたコンテンツは世の中で限られているので、意味のあることだと思っています。
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