親と教師のそういち就活研究所

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資格は新卒の就活ではあまり役立たないが、役立つとすればこの3つの基本

資格は新卒の就活ではあまり役立たない 

就活生の方に「何か資格の勉強をしたほうがいいでしょうか?」と聞かれたことが何度かあります。

就職活動が本格化している卒業年次の人なら、資格の勉強をするよりもまず学校の勉強と就活に励むほうがいいでしょう。

では、卒業年次以前の人はどうなのか? それでも、就活を意識して資格取得の勉強をするのはおすすめしません。新卒の場合、資格が就活で有利に働くことはあまりないからです。

日本企業はほとんどの場合、資格と結びついたスキル・能力を、新卒に対して期待していません。相当に高度な資格でも評価されないのです。

たとえば宅建(宅地建物取引士)の資格は、とくに受験資格はないので学生も取得でき、数百時間の勉強が必要な資格です。しかし不動産会社を受けるときでさえ、学生がその資格を持っていても、それ自体でとくに有利にはなりません。少なくとも資格取得の労力に見合うプラスはないのです(私がキャリアカウンセラーの実務のなかで経験したことです)。

その資格勉強が面白いなら意味がある

これは、ほかの業界と資格でもいえることです。IT企業を受ける際の情報処理の資格、金融機関を受ける際の経理やFPの資格でも、同じことです。

ただし、これはあくまで「新卒の就活では」ということです。社会人の場合は、いくらかちがいがあります(それでも資格への評価の低さは、日本の労働市場全般にみられます)。

なお、業界・職種によっては新卒でも資格が必須であるか、資格取得者が有利という場合はもちろんあります。しかし多くの学生が受ける総合職や、事務、営業、販売・接客の仕事では、資格は採用選考にほとんど影響しないのです。

これは、資格の勉強が無意味だというのではありません。その勉強が面白いなら、きっと得るものがあるはずです。しかし、就活で有利になることを期待して勉強するとあてがはずれる、ということです。

 役立つ基本1・TOEIC500~600点

ただし、少なくとも3つの例外があります。以下の3つの資格の勉強なら、多くの人にとって就活でプラスになる可能性がおおいにあります。どれも「基本」といえるものです。

「基本」ですから、人気企業への入社には役立ちません。しかし、それほど人気ではない、とくに中小企業への就活ではおおいに意味があります。

まず、TOEICや英検などの英語の検定です。このこと自体は説明の必要はないでしょう。高いスコアや難しい級を取得できれば、それに越したことはありません。

ただ、ここで強調したいのは「スコアがそれほど高くなくても一定の意味がある」ということです。つまり、目安としてはTOEICなら500~600点、英検なら2級で、就活にむけた資格取得として一定の意味があります。

たとえば中小の専門商社や海外物流に関する企業の事務職で、このくらいの英語力を応募の要件にしているケースがあります。その企業としては「このレベルの英語力では戦力にはならないが、入社の時点ではそのくらいの基礎があればいい」と考えているのです。

ネット上で「英語と就活」に関し、「TOEIC800点なんて…」みたいな話をみかけたことがあります。たしかにその人の想定する世界ではそうかもしれない。しかし、英語力というのは(何でもそうですが)いろんなレベルのニーズや使い方があるということです。

 役立つ基本2・簿記3級

もうひとつは、簿記です。この資格があると、おもに中小企業で事務職をめざす場合に、可能性が広がります。

事務職の求人には簿記は不要のものも多いですが、経理系の職種は簿記資格を求める場合が多いです。簿記の資格があれば、どちらも受けることができます。応募できる範囲が広がるわけです。

また、簿記の資格が必要な求人は応募者が比較的少なく、競争率が低いです。そして簿記の素養は、総務や経営管理などの経理以外の事務職でも役立ちます。

企業が新卒に求める簿記資格は多くの場合「日商簿記3級(以下、簿記3級)」です。「簿記2級」を求めることもありますが、「将来の経理部門の責任者候補」などの場合で、新卒求人では例外的です。

簿記3級は、一定のセンスのある人がまじめに勉強すれば3~4か月で受かることも可能です。しかし、本当にまじめにやらないと受かりません(センスがなくて挫折する人もかなりいます)。

世間には「簿記3級なんて簡単」「役に立たない」みたいなことを言う人もいます。しかし、多くの人にとっては、何か月かはまじめに勉強しないと受からない試験です。また、たしかに簿記3級だけでは経理の実務では歯が立たないのですが、「基礎」として重要であることは多くの経理マンも認めています。

だから就活でも、とくに中小企業の事務系の職種を受ける際には、この資格はプラスになるのです。

 役立つ基本3・自動車免許

3つめは「普通自動車免許(以下、自動車免許)」です。そしてペーパードライバーではないほうがいい。オートマ限定でかまわない。

「なーんだ」と言わないでください。営業職、とくに中小企業の営業職では、多くの求人が自動車免許を応募の要件にしています(事務職でも求めていることがある)。

しかし、自動車免許を持っていない学生さんは少なくありません。「それで別に困らないから」というのです。地方はともかく、大都市で育った人にそういう人がかなりいます。自動車に対する関心やあこがれが強かった昔の若者とはちがうと感じます。なお、全国の20代前半の免許取得率は近年は7割程度です。

営業職は、新卒の就職先として大きな比重を占めています。自動車免許を持っていないと、それを受けるのが難しくなるのです。就活の前に自動車免許を取得して損はありません。

もちろんその後の生活にも役立つし、社会人になったら忙しくて自動車学校に通うのは大変なのですから。

 「基本レベル」の価値

あとは、資格ではありませんが、ぜひパソコンのワープロや表計算のソフトは、ごく初歩的なレベルのスキルを身につけてほしい。それができない学生さんはじつは少なくありません。

以上、役立つ3つの資格とは、「TOEIC500~600点か英検2級」「簿記3級」「普通自動車免許」ということです。あとは、ワードやエクセルのごく初歩の操作。

 「なんだそれは」と否定的に思う人は、世の中にあるエリート志向の発言に影響されすぎているのです。かなり有能でないかぎり、これらの資格やスキルをものにするには、相当な努力が必要です。とくに自動車免許以外の2つはそう。

そしてこれらのスキルは、学生時代などの若いときに身につけることで、その後のいろいろな基礎になります。「このくらいは学生のときに勉強しておいてよかった」ということになる。

そういう基本レベルのスキルは、じつは相当な価値をもっている。これは重要なことだと思います。