- 今は「就活の支援者」がいる
- 「人に頼るな」ではなく、支援をうまく使う
- 「もっと早く相談に行けばよかった」
- まずキャリアセンター、つぎに公的サービス
- 限界や不満足な点はあるだろうが…
- 「不安を煽る」「脅し」にはご用心
今は「就活の支援者」がいる
これから就活を始める人、あるいは就活で壁につきあたっている人にとくに言いたいのは「就活は1人でやらなくてもいい」ということです。つまり、カウンセラーのような支援者を上手に使ってほしいのです。
これは、就活生の親御さんには、とくに説明したいところです。親世代の方々が学生だった頃には「就活の支援者」はマイナーな存在でした。少なくとも今のような質・量ではなかった。
今50代の私が大学時代に就活したときも、「就活の支援者」に相談することはありませんでした。そもそも、その存在を知らなかった。
しかし今は、大学のキャリアセンター(昔の学生課・就職課)に就活のカウンセラーが常駐しているのは、ごくふつうのことです。就活シーズンのピークには、キャリアセンターはおおいに混雑します。
また、新卒や新卒やそれに近い若者の就活を専門とするハローワーク(新卒応援ハローワークなど。厚労省の組織)も各都道府県にあります。都道府県などによる若者の就活を支援する組織も(地域によりますが)存在します。新卒生を対象とする民間の「就活エージェント」や「就活塾」も増えました。
今の就活と昔の就活のちがいは、インターネットのほかには「就活の支援者」が広く存在するということです。
「人に頼るな」ではなく、支援をうまく使う
その一方で中高年の方のなかには「就活は人に頼らず自力で行うべきだ」という考えで、「支援」に否定的な人もいます。
これは、私が支援した就活生から、親御さんのそのような考えを何度か聞いたことがあります。また、私が就活支援の仕事について一般の大人に話すときにも、たまに耳にする意見です。
そして就活生のなかにも「人に頼りたくない」という人は、もちろんいます。
就活という大切なことについて「自分で主体的に行いたい」と考えるのは当然で、そうでなくてはいけない。
しかし、「支援をうまく使う」「アドバイスは参考にするが、決めるのは自分」という姿勢でのぞめば、主体性は損なわれないでしょう。
新卒の就活生に対する支援は、今はかなり普及したサービスです。これは積極的に使っていいのではないか。そもそも専門家の支援を上手に使いこなすことは、現代人にとって大事な素養ではないでしょうか。
「就活は人に頼るな」という主張には、洗濯機やスマホが登場したときに「あんなものは」と否定した頑固オヤジと共通したところがあるように思います。
たしかに「就活の相談」には、家電製品やスマホほどの利便性はないでしょう。しかし「正しく服用すればそこそこ効くクスリ」くらいのものではあると、私は思っています(「そんな程度のクスリはいらない」という考えも当然あるでしょうが)。
「もっと早く相談に行けばよかった」
私がこれまで毎年の秋頃以降(年明け以降の方もいる)に初めてお会いした就活生のなかには「これまでどこにも(あるいはわずかしか)相談に行ったことがない」という方がかなりいます。
しかしなかなか内定が得られないなど、壁につきあたって、意を決して相談に来られたのです。
そして、そういう方と何度か相談を重ね、面接の通過率が高まるなどの成果がでてくると、「もっと早く相談に行けばよかった」と言っていただけます。
就活について職業的に取り組む大人の目で、応募書類や面接での言動について確認すると、やはり気がつくことがあるものです。
たとえば「これが私の強みだ」と就活生自身が思っていたことよりも、その人の持つ別の要素のほうを企業は評価するはずだと気がつく。それまで内定が得られなかった志望の業界の周辺に、こんな業界・企業があるとお伝えできる。そういうことが結構あるのです。
特別なカリスマ的支援者などでもなくても、壁に突き当たる学生さんが自分では見落としていることに気づくのは、それなりにできるものです。いつもうまくいくとはかぎりませんが、相談してみて損はないと思います。
たしかに、「支援者」にほとんど相談しなくても就活をすすめ、納得のいく結果を出せる人はいます。私も、そういう方にお会いすることがありました。「相談しない人」がカウンセラーのところに来たのは、「複数の内定を得たがどうするか」「内定辞退の仕方」など、内定してからの相談のためです。
そのなかには、たしかにしっかりしていて「こういう人なら1人でも就活をすすめられるだろうな」と思える人がいます。しかし、それはやはり少数派ではないかと思います。
まずキャリアセンター、つぎに公的サービス
やはり多くの就活生には、「就活の支援」のサービスを試してみることをおすすめします。
まず、大学のキャリアセンターに行ってカウンセラーに相談してみましょう。そこで納得がいなければ、各都道府県に1~2か所設置されている「新卒応援ハローワーク」にも行きましょう(どの大学の人でも、どの地域の人も利用できる)。
民間の就活エージェントや「就活塾」は、それよりも優先順位が落ちると私は考えます。なお断っておきますが、今の私はフリーランスで、どの組織にも属していません。
就活エージェントは、いろんな求人の情報を持っていますし、なかには有能な担当者もいます。しかし、就活エージェントというビジネスの顧客(エージェントの企業にお金を支払う存在)は、求人を出している企業です。
就活エージェントは企業に就活生を紹介し、その入社が決まれば企業から報酬を得るのです。それ自体はビジネスとして問題はなく、労働市場にとって必要なサービスです。とくに社会人の転職では、ぜひ利用すべきサービスだと思います。
しかしそういうビジネスのなかで、社会経験のない学生さんがほんとうに「自分のために」エージェントを使いこなせるのか。私には不安があります。
そこで、こうしたエージェントを利用するにしても、大学のキャリアセンターや、新卒応援ハローワークなどの公的サービスと併用されることをおすすめします。そのことで、エージェントについて(同時にキャリアセンター、ハローワーク等についても)そのサービスやアドバイスを客観化できます。
また、有料の「就活塾」はどうか。「無料」のサービスが分厚くある分野で(大学は授業料は支払っているが追加費用はない)こうした有料サービスは、優先順位が低くなって当然でしょう。
限界や不満足な点はあるだろうが…
大学のキャリアセンターやハローワークの支援にも、もちろん限界や不満足な点はあるでしょう。大学によってはキャリアセンターの体制が不十分なところもあります。新卒応援ハローワークも、大都市ではかなり大きな施設でスタッフも多いのですが、ほかの都道府県はかならずしもそうではありません。
また、キャリアセンター、ハローワーク、エージェントのすべてにいえることですが、担当者のスキルや経験はまちまちです。
しかし、このような問題点は、社会で提供されるほかのサービスにもあることです。気にし過ぎることなく、まずは行きやすいところから利用してみては?
行ってみて納得がいかなければ、その組織の別の担当者も試せばいいし、別のサービスにあたってもいいでしょう。「相談に行ったら、何か大きなマイナスがあるのでは?」などと心配する必要はないと思います。
「不安を煽る」「脅し」にはご用心
それでも、ひとつだけ「こういう支援者は望ましくない」と私が思うことを述べておきます。
それは「不安を煽ること」や「脅し」が強く出る場合はご用心、ということです。
「そんな勘ちがいをしていたら、たいへんなことになる」「そんなところ(よそのサービス)で相談していたら危険だ」「今は求人が厳しい状況なので、甘く考えていたら就職できなくなる(だからこの会社を受けるべきだ、もうこれしかない)」みたいなことを強く言う人については、疑ってみてください。
その人はその「脅し」の根拠・理由を説明してくれるかもしれませんが、それはどれも冷静に聞けば、あやしいものです。
「脅し」というのは、相手を揺さぶって何かを押しつけたいから行うのです。それは、人の主体性をおびやかすことです。
就職活動は、自分が主体的に生きる基盤をつくるために行っているのです。その相談の場で人の主体性をおびやかすなど、あってはいけない。そんなことに出くわしたら、その場から離れることです。まずは周囲の信頼できる人に(できれば大人に)相談しましょう。
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