親と教師のそういち就活研究所

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エントリーシートは自分をプレゼンする設計図。たとえ読まれなくても自分のためにしっかり書く

エントリーシートは読まれていない?

エントリーシートは、就活において履歴書ではあらわしきれない就活生の特徴を伝えるための書類です。その中心となるのは「自己PR」「学生時代に力を入れたこと」「志望動機」の「三大質問」です。このほかにその企業独自の質問も加わります。

エントリーシートに似たもので「自己紹介書」というものもあります。これは、おもに中小企業で使われる、エントリーシートの簡易版といえる書類です。

このような応募書類の基礎知識は(とくに中小企業の場合について)、つぎの記事で述べています。

この記事では「エントリーシートや自己紹介書(以下、単にエントリーシートという)をしっかり書こう」と強調したいと思います。

「そんなことは、あたりまえじゃないか」と思うかもしれません。

しかし、「エントリーシートは企業に読まれているか?」ということが就活の世界では議論されることがあります。あまり読まれていないなら、しっかり書こうという気は薄れてしまいます。

つまり、つぎのようなことがときどき言われるのです。

「エントリーシートの大半は読まれない」「エントリーシートは建前で提出させているだけで、企業は中身を読むことはなく、学歴でふるいにかけている」「エントリーシートのような書類は、人の手を借りてつくることもできるので、企業は信用していない」

これは本当なのでしょうか?

読まれないこともあるが、かなり読まれている 

以上の「エントリーシートは読まれない」という話には、ある程度の真実が含まれてはいます。しかし「エントリーシートは建前」というのは、一部の人気企業にだけあてはまることです。

それほど人気ではない企業は、エントリーシートをきちんと読みます。処理しきれないほどの大量の応募はないのだから、応募書類を読んで面接に値する人をきちんと選ぶのは当然です。

また人気企業でも、その会社独自の凝った質問・テーマが出されているときは、きちんと読む可能性が高いです。書類からを応募者をしっかり見きわめたいから、凝ったお題を出して書かせるのです。そして、こういう場合は書類審査のハードルは高いわけです。

以上のことを、私は経験的に感じてはきました。ただし私は、大企業への就活よりは中小企業への就活を多く支援してきた者です。

そこで大企業への就活に詳しいコンサルタントの海老原嗣生さんの『なぜ7割のエントリーシートは、読まずに捨てられるのか?』(東洋経済新報社、2015年)という本を再読しましたが、やはり同じような見解です。

海老原さんは「超人気企業でエントリーシートの題材が平凡→学歴スクリーニングにしか使わない」「そこそこ人気企業×ややこしい課題→学生の「本気度」を試している」「超人気企業×ややこしい課題→本気で読む」と述べています。(同書66ページほか)

つまり、エントリーシートは「読まれないこともあるが、かなり読まれている」ということを知っておくべきましょう。

中小企業では「きちんと読まれる」のが原則

そして、「エントリーシートは読まれているのか?」という議論の余地があるのは、大企業の就活の場合に限られます。

このブログのテーマである中小企業への就活では、「自己紹介書はきちんと読まれる」前提でまちがいありません。多くの中小企業は「それほど人気ではない」からです。「学歴(どんな大学か)でふるいにかける」という発想も、中小企業にはありません。

「エントリーシートなんて、きちんと書いても大した意味はない」などという話を信じてはいけません。

自分をプレゼンする設計図・レジメ

そしてさらに「たとえ企業がきちんと読まなかったとしても、エントリーシートはきちんと書くべきだ」といえます。

それは、エントリーシートは面接で「自分をプレゼンする」にあたっての設計図、あるいはレジメと位置づけられるものだからです。

レジメ(レジュメ)とは、論文や発表の概要・骨格を示した文書のことです。つまり、発表・プレゼンの設計図ともいえる。

そして面接は「自分を面接官にプレゼンテーションする場」だということ。

プレゼンテーションといっても、インターネット動画で有名人が行っているような、いかにも格好いいパフォーマンスが求められるわけではありません。とくに流ちょうに話すことも不要です。

大事なのは自分自身や、自分が会社をどうみるかについて、意味のある、納得感のある話ができるかどうか。多少つっかえても、全然かまいません。つまり、「中身」が大事です。

プレゼンの「中身」はエントリーシートに集約される

そしてその「中身」の基本は、エントリーシート・自己紹介書に集約されているものなのです。エントリーシートには、「自己PR」「志望動機」などの最も大事な事柄が書いてあるのだから、それも当然です。

エントリーシートがきちんと考え抜かれた内容であれば、面接での対話は内容のあるものになります。しっかりと書類を書いた人は、それだけ自分や会社についてしっかり考え・整理しているからです。

人と相談しながらでも、考えを深め整理していくことが大事です。

しっかり考えて書けば、質問項目の周辺の事柄や、さらに具体的な事例などについても考えることになります。だから、深堀りの質問にも対応できるようになる。

エントリーシートのレベルを大きく超えた、いい内容のプレゼン(面接)というのは、例外はありますが、基本的にあり得ません。少なくともエントリーシートをしっかり書くことで、面接の質が上がることはまちがいないです。いいレジメがいい発表につながるのは、当然です。

しっかり書くためには「これは面接の基礎となるレジメなのだ」という意識で書くことです。

「戦略的に浅く書く」なんてすべきでない

ときどき言われるような「あえて浅く書くことで、その点について面接官から質問され、スムースに受け答えできることを狙う」、つまり「戦略的に浅く書く」なんて、私はすべきではないと思います。

そんな小細工をするよりも「伝えたいこと」を、スペースの範囲内で可能なかぎり書くことです。伝えたいことを書類でしっかり述べたうえで、そこから面接官に「深堀り」してもらうのです。

そのことで、面接官はより深い・遠いところまで、あなたについて知ることができる。深いところまで対話できればできるほど、あなたへの信頼が生まれるチャンスが生じます。

書類で出し惜しみをしたら、読む側には「もやもや」が生まれ、面接はその「もやもや」を解消するための基本的な事実確認などで時間をとられてしまいます。

「もやもや」への対処ばかりで終わった面接では、その人が評価されることはむずかしいでしょう。

大事なのは、スムースな受け答えではなく、できるかぎり中身のある・深い対話をすることです。それには準備が必要です。そして、エントリーシート・自己紹介書をしっかり書くことは、その「準備」の基本なのです。

 

自己紹介などの「中身」についての基本的な考え方を述べた記事

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