親と教師のそういち就活研究所

親・先生などの、若者の近くにいる大人のための就活講座のブログです。でも就活生にも役立つかと。

学校は文章の書き方を教えてくれないのに、就活の作文は難しいことが求められる

目 次

文章の添削・指導という世界

私が大学生や若者のための就職相談という、キャリアカウンセラーの仕事をして出会った世界のひとつに、「文章の添削・指導」があります。

つまり、学生さんなどの若い人から、企業に出す応募書類の添削を求められるのです。「自己PR」「学生時代に力を入れたこと(ガクチカ)」「志望動機」などが書かれた書類です。

私は自分なりにずっと文章を書いてきました。著作を商業出版したこともあります(ライフワークとして追及している世界史や、勉強法の本)。

そして会社勤めのころは、法務・総務系の仕事で多くの報告書や議事録などを書きました。そんな私にとって、文章の添削は興味深い仕事です。

「わかりやすく、正確に書く」ことを教えてくれない

この仕事を経験してはっきりと自覚したのは、「学校では文章の書き方を教えてくれない」ということです。

もう少しいうと、「わかりやすく・正確に書く」ことを教えてくれないのです。少なくともそれを教えるのは、まれであるということです。

書くことに戸惑っている人は、ほんとうに多い。学生だけでなく、大人もそうです。それを日々実感してきました。

学校でも、いろんな作文は書かされます。でも、本格的に添削・指導されることは、まずありません。「わかりやすく、正確に書く」といった技術的なことを、授業できちんと習ったことは、ふつうはないはずです。

国語の授業は文芸的な世界を重視

国語の授業は、「わかりやすい文章」よりも、文芸的な、美的な世界や深い価値を追求する世界を教えるほうに力を入れています。少なくとも一昔以上前には、明らかにそうでした。

文芸的な世界はもちろん大切ですが、基本的な作文の技術も、もっと教えたらいいはずです。

ただし、近年は実用的な文章に力を入れるという方向性も、教育現場では有力になっているそうです。しかし、「それが十分な効果をあげているのか」というと私には疑問があります。

実用的な文章の教育は経験の蓄積がかぎられるのですから、そう簡単にはいかないでしょう。自分がこの何年かに接した学生さんをみていると、そう思います。

大学のレポートや卒論も練習になりにくい

大学ではどうなのか? 大学でレポートや卒論を書くのも、じつは「書く」練習にはなりにくいです。

大学でのレポートは、学術論文をお手本にしています。それに遠く及ばなくても、理想としてはそうなっています。これはこれでたしかに意味があります。

でもたいての学術論文は、社会で広く求められる文章の基準では、かなりの「悪文」です。つまり、もってまわった、ガチガチした文章。正確性を要求されるので、どうしてもいろんな前提・言い訳がついて、文章が重くなってしまう。

それを「お手本」とするのは、練習としてはどうかと思います。読みやすい文章を上手に書く研究者・学者は増えていますが、まだ限られています。 

また、なかにはレポートについて、いろいろ文章指導をしてくださる先生がいることも、学生さんから聞きます。それは非常に恵まれたことです。先生はたいへんだと思います。

就活の作文は難しいことが求められる

このように、学校はほとんどの場合、文章の書き方をあまり教えてくれません。それなのに、就職活動のための作文ではかなり難しいことを要求されます。

たとえば「自己PR」では、「自分はこういう人間で、それを説明する出来事としてこんなことがあった」と述べるのが一般的です。

そして、「出来事」を述べるにあたっては、「自分がその場で何を考え、どう動いたか」を伝えないといけない。「自分の視点」を打ち出さないといけない。企業が知りたいのは、エピソードそのものではなく「あなたがどんな人か」ということだから。

これを、数百文字(かそれ以上)で書くのです。書かれている場面について目にうかぶように、過不足なく情報を盛り込んで、読みやすく書く。

これはあくまで高い目標です。こんなことがすんなりできる学生さんは、じっさいにはなかなかいません。社会人だって、かなりの人はできません。でも、目標としては以上のような文章が求められるのです。

就活の作文は、はじめての本格的な文章作成

就職活動での作文や表現について、冷ややかな目でみる人もいます。「自己分析や自己PRって、どこか気持ち悪い」というのです。

そういう面は、たしかにあると思います。「私の長所は……です。たとえばこんなことがありました……」などと訴えるなんて、日常の感覚ではまずありえません。自己主張を控える傾向が強い、私たち日本人にとってはそうです。

しかし一方で、自己PRのような「就活の作文」は、たいていの若者にとって「人生で経験する、はじめての本格的な文章作成」です。だから、じつは大きな意味があると思います。

「本格的」というのは、明確な目的や伝えたいことがあって、そのために事実と主観をおりまぜながら、わかりやすく・正確に、しかもコンパクトに書くということ。これは学校では教えてくれなかった、大事なことです。

若い人たちは就職活動で、その「大事なこと」をはじめて体験しているのです。それは「おかしい」のかもしれませんが、実態です。

このブログでは、就活の作文の参考になる記事をいろいろと載せたいと思います。たとえば、下記の記事をご覧ください。